★ マイクと保育所 ★
クリエイター暁ゆか(wrds2873)
管理番号398-6114 オファー日2008-12-28(日) 21:45
オファーPC マイク・ランバス(cxsp8596) ムービースター 男 42歳 牧師
<ノベル>

 銀幕市内の雑居ビルの1フロア。
 そこが、マイク・ランバスが開いた教会兼保育所兼孤児院兼自宅である。

 孤児院でもあるその場所には他の児童施設から預かって欲しいよう言われてやって来た子どもたちが幾人か居た。
 子どもたちの中には小学校に通うより小さな子も居て、彼らが昼間、淋しくないように同年代の子どもたちと一緒に過ごせるようにと考えた結果、マイクがその1フロアの1室に開いたのが、保育所であった。
 朝昼夜、3食とも子どもたちの食事を作るのは、マイクの仕事である。
「せんせーおおきさバラバラー」
 けれど少々手先が不器用な彼が切る野菜の大きさは大きい小さいが激しく、大きいものに火を通そうと思えば、小さいものは煮えすぎて崩れたり、焼きすぎて焦げてしまったりしてしまう。
「すみません、次は大きさを揃えますね」
 次こそは大きさを揃えようと反省しながら、子どもたちに応える。
 子どもたちが昼寝をしている間には、取れたボタンをつけておいてあげたりするのだが、やはり少々手先が不器用な彼にとっては至難の業で。
「先生、なんか場所ちがうー」
 昼寝を終えて、起きた子どもたちがパジャマから普段着に着替える途中に上がった声に、マイクがそちらへと視線を向ける。
 ボタンを掛け間違えている様子はないのだが、余ってしまっているボタンホールが1つ。ボタンホールの数に対して、ボタンの数が少なく、更に感覚もボタンホールと違うために、生地が波打ってしまっていた。
「ご、ごめんなさい。こちらを着ていてもらえますか? 直ぐに、付け直しますから」
 そう言いながら、代えの服を取り出して、ボタンを付け間違えた服はまた、付け直そうと置いておいた。
 そんな日常を繰り返す保育所を開いて間もない頃、訪れたのは50歳くらいの女性と、その娘らしき若い女性であった。
「近所に住んでいる相沢と申します。保育所が出来たと聞いて、何かお手伝い出来ることがあればと思って来ました」
「娘の晴香です。あの……私、大学の社会福祉学科に通ってまして。大学の授業以外に、何か出来ればって思ってたんです」
 そう挨拶した相沢母娘をマイクは快く受け入れる。
「あらあら、大きさがばらばらね。それじゃあ、火の通りがそれぞれ違うでしょ?」
 ややぽっちゃりとした体系で、朗らかな笑顔を見せる母、相沢愛子が得意とするのは料理で、マイクが切る野菜の大きさを見て、そう言った。
 マイクから包丁を借り受けて、代わりにシンクの前に立つ。大きさがばらばらになった野菜を小さいものの大きさに揃えて、その後の作業も続けていく愛子。
「服、破れちゃったんですか? 子どもって元気ですよね」
 取っ組み合いの喧嘩をして、敗れてしまった服を縫い合わせておこうと取り出せば、優しい笑顔が印象的な娘の晴香が覗き込んで来た。
 手伝います、と手分けをして繕ったり、ボタンを付けたりしていたのだが、マイクの手元の様子に、晴香は口の端に苦笑を浮かべ、
「残り全部、私がやっておきます」
と、裁縫の全てを買って出る。
 そういうわけで、マイクは母娘2人が来ているときは、子どもたちとの本気の遊び相手をし、叱るべきところでは叱り、反省すれば笑顔で許すというしつけ周りのことをしているのだ。
 ただ、マイクは料理と裁縫を2人に任せっきりということに引け目を感じていた。
「はあ……」
 事務室で、休憩でもどうぞ、と愛子が淹れてくれたお茶を手に、大きくため息をつく。
 彼自身自覚はしていないのだが、度々こうして大きなため息をついているため、愛子が影から見守り、気にしていた。
「どうしたの、そんなため息ついて」
 愛子も自分自身にお茶を淹れてきて、マイクの傍に座る。
 昼寝をしている子どもたちは晴香に任せているので、今の間に話をしようと声をかけたのだ。
「あ、いえ……その、お2人に迷惑をかけてばかりだと思いまして。料理や裁縫などは特に……」
「何、気にしているの! マイク先生は、子どもたちと本気で遊んだり、叱ったり許してあげたりしてるでしょ! それでいいのよ!」
 また落ち込んで、うな垂れるマイクに対して、愛子はその背中を軽く叩きながら言う。
「そ、そうですか?」
「そうよ。出来ることはして、出来ないことは私たちに頼ったって、ね?」
 訊ねるマイクに、愛子は微笑んで返す。
「お母さん、マイクさん、私、午後から授業あるので、お昼寝の残り……お願いしますね?」
 そこへやって来た晴香はそう告げて、荷物を纏め始める。
「愛子さん、晴香さん、その……いつもありがとうございます! 今後も迷惑かけてしまいますけど……、よろしくお願いしますね」
 帰ろうとする晴香と、昼寝の監督に行こうとする愛子を呼び止めて、マイクはそう言うと、深々と頭を下げた。

 マイクが保育所で過ごす大変な日々はまだまだ続きそうである。


終。

クリエイターコメントオファーありがとうございました。
マイクさんの保育所での日々とか、ご想像通りに描くことが出来ていれば良いのですが……。
宜しければ、感想とかいただけると諸手を上げて喜びます。また、機会がありましたら、よろしくお願いしますね?
公開日時2009-01-10(土) 22:30
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